
白菜栽培におけるコナガ被害を防ぐ!発生時期・防除・対策方法を解説
白菜栽培において、コナガは収量と品質に深刻な影響を与える主要な害虫の一つです。
この記事では、白菜に発生するコナガの生態や被害、防除対策について解説します。
コナガの生態と白菜への深刻な被害
白菜に発生するコナガの生態と特徴
コナガは、チョウ目コナガ科に分類される昆虫で、アブラナ科の植物を食害する害虫です。成虫は体長10mm程度の灰褐色のガで、その幼虫が、白菜などの作物の葉を食害して被害を与えます(幼虫は体長6~10mm前後で薄い緑色の青虫)。日本全国に生息しており、春から初夏、秋の発生が見られます。北海道や東北などの積雪地域を除いては、冬季にも、成虫・さなぎ・卵の状態で生息し、気温が上昇して条件が整うと活動を再開して加害します。
コナガは世代交代が早く、暖かい時期には約10日から2週間で卵から成虫になって交尾を繰り返し繁殖します。このため、年に5~10回程度発生するケースも多く、高い繁殖力と短期間での成長サイクルが、コナガの被害を拡大させる大きな要因となっています。
コナガの食害が引き起こす収穫減と品質低下
コナガの幼虫による食害は、白菜の品質と収量に深刻な影響を及ぼします。
葉の食害による商品価値の低下
幼虫は葉の裏側から円形または不規則な形に小さく葉肉だけを食害して、葉の表面の表皮を残すため白く透けた食害痕を残します。被害が進むと、葉に穴があいてボロボロになり、白菜の商品価値が損なわれる原因となります。
結球内部への侵入
白菜の外葉の形成期から結球肥大期の柔らかい新葉に、コナガの幼虫が集団で発生することがあります。この時期の防除を怠ると、結球内部にコナガの幼虫が侵入してしまうことになります。すると、大きくなった白菜の外葉をはがさない限り被害に気づけず、収穫・出荷後に発覚することにもなります。
収穫量の減少
幼苗の頃に食害されると、白菜は十分に成長できません。その結果、結球不良や生育遅延が起こり、収穫できる株数が減少し、収益の減少に直結します。
コナガの被害を早期に発見するためのポイント
コナガの被害を早期に発見するためには、以下の点に注意して圃場を観察することが重要です。
食害痕のチェック
幼虫は葉の裏から食害します。そのため、葉脈が透けて見えるような食害痕がないか定期的にチェックしましょう。該当するような食害痕のある葉をたたくと、7~8mm程度の青虫が糸を引いて葉裏から落花したら、コナガである可能性が高いです。
葉の裏側の確認
成虫は葉の裏側に卵を産み付けます。また、コナガの幼虫は、どちらかと言うと葉の表面よりも裏面にいることの方が多いため、葉をめくって小さな白い卵塊がないか、幼虫がいないかを確認することが大切です。また、葉裏のくぼみに網目状の小さな繭(まゆ:コナガのさなぎです)が無いかも確認しましょう。
コナガ対策と防除方法
農薬散布の基本とローテーション散布の重要性
コナガ対策の最も一般的な方法は農薬散布です。効果的な防除のためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
若齢幼虫への散布
コナガの幼虫は、成長して老齢幼虫になると薬剤が効きにくくなる傾向があります。そのため、ふ化直後の若齢幼虫のうちに農薬を散布することが、高い防除効果を得るための鍵となります。
ローテーション散布
コナガは世代交代が早いため、同じ系統の農薬を繰り返し使用すると、薬剤抵抗性を持つ個体が増加する傾向があります。これを防ぐために、複数の異なる作用機作を持つ農薬を計画的に使い分ける「ローテーション散布」が非常に重要です。
物理的防除・生物的防除の方法
化学農薬に頼らない対策として、物理的・生物的防除の実践も大切です。
防虫ネット
圃場をきめ細かく覆うことで、コナガの侵入を防ぐことができます。成虫の侵入を防ぐには1mm目合い、幼虫では0.4mm目合いの防虫ネットや寒冷紗の利用が有効です。
捕殺と散水
大規模な圃場では現実的ではないかもしれませんが、卵塊や幼虫を早期に発見し、手作業で取り除くことも有効です。コナガは葉の表面よりも裏面にいることが多いので、葉裏も注意深く確認し駆除しましょう。
また、散水することでコナガの雌の産卵行動を抑えられることも分かっています。ただし、栽培時期や生育ステージによって必要な潅水量は異なるため、その他の防除方法と組み合わせて実施するなど注意が必要です。
除草と残渣の持ち出しの徹底
ナズナなどのアブラナ科の雑草が、コナガの発生源となる場合もあります。雑草はこまめに取り除きましょう。また、収穫後の残渣などもコナガの発生原因となります。速やかに処理することが望まれます。
天敵生物の活用
圃場に生息するクモ類やゴミムシ、ハサミムシ、寄生バチなどの天敵昆虫を活用することで、自然とコナガの数を減らすことも可能です。ただし、コナガ駆除に使用する農薬が天敵昆虫に作用してしまう可能性もあるため、農薬の選定には注意が必要です。
これらの対策を取り入れることで、農薬の使用量を減らし健全な白菜栽培を実現することが可能です。
まとめ
本記事では、白菜栽培におけるコナガの脅威と、その効果的な対策について解説しました。コナガは高い繁殖力と薬剤抵抗性をもつ厄介な害虫です。しかし、コナガの生態を理解して適切に対策すれば、大きな被害を食い止めることが可能です。本記事でご紹介した内容を参考に、白菜栽培におけるコナガ対策を見直すきっかけにしていただけますと幸いです。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。