農業経営におけるデータの活用 「生産性向上の取組:従業員個別の作業量の把握と活かし方」
前回に続いて農業経営における記録とデータの活用方法について検討します。活用事例を通して「農業経営における記録を取ること」の意義を考えます。今回は、栽培・収穫・出荷作業時におけるデータの活用例「従業員個別の作業量の把握・管理と活かし方」です。
近年、どの産業においても労働力不足が深刻な状況であり、農業においても雇用が難しくなっているのも事実です。そんな中、「今いる従業員1人ひとりの生産性を高めて、全体として効率の良い農場運営を目指している。」という話を良く聞きます。
生産性を把握・管理するためには、従業員個別の作業量を数値化する必要があります。今年10月に行われた「第13回 農業Week2023」でも、「ベジパレット」の「作業実績(従業員別)」のグラフ(従業員ごとに携わった各作業の作業時間が分かります)を見た農業経営者の方から「従業員の生産性を数値で把握したい」との声を数多くいただきました。
生産性の数値化は難しい場合もありますが、「収穫作業における従業員ごとの収穫量(kg等)」は、収穫作業の素早さと単位時間当たりの作業量(生産性)を示す指標として簡単に活用できます。「従業員個々の生産性を数値化して管理し、農園全体の生産性を向上させる。」というお話は、繰り返し作業の多い施設園芸の農業経営者から伺うことが多いのですが、露地栽培や果樹栽培の農業経営にとっても重要なことだと考えます。
従業員の個別作業量から分かること・活用方法
- 農業経営者自ら作業を実施して、単位時間当たりの作業量の標準値(目安目標)を設定する。 その標準値を基準に、作業に不慣れな従業員へ目安となる目標値を順次設定しながら指導に活用する
- 作業スピードの速い従業員・熟練従業員の作業の実施法・コツなどを共有するきっかけにする
- 従業員個別に得意な作業・不得意な作業の見極めができ、それを従業員への作業の割当てに活用する
収集するデータ
- 従業員ごとの作業時間とその時間内での作業量(Ex.収穫などの重量・コンテナ数等)
このように従業員の生産性をデータで可視化し、次のチャレンジ目標を設定、クリアした場合には次の段階の仕事を任せることで、その従業員のスキル向上、モチベーションアップになれば、農園全体の生産性向上だけでなく、働き甲斐や意欲の増進も期待できます。
世界情勢の影響による物価高で、資材代・燃料代・肥料代が高騰する中、農業経営にも無駄の無い効率的な経営が求められています。
私たちも、「UNIRITAみらいファーム」でのミニトマト栽培、その他旬の野菜の栽培と出荷を通して、生産性の向上を意識した実践に取り組んでいきます。
執筆者情報
株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。