農業における大きな課題、栽培ノウハウの継承・共有について
最近、多くの農業関係者の方からお話を伺う機会をいただく中で、以前にも増して気になっている事があります。それは、「農業従事者の高齢化によって担い手が不足し、同時に栽培ノウハウが失われ、産地が弱体化してしまうのではないか」と言う危機感です。
先日お伺いした出荷組合の方は、「組合員(農家)の高齢化によって出荷者が減っていて、将来的には、組合として出荷が難しくなる日が来るのではないかと思っている。」とおっしゃっていました。また別の農協職員さんは、「担い手の減少によって、地域の特産品である野菜の生産量が落ちるばかりか、ベテラン農家の栽培の知見が失われる危険もはらんでいる。」とのお話がありました。
この問題に対し、市・県などの行政では、農協、資材メーカーと協力して、より労力の掛からない栽培方法を研究したり、高額な肥料代を抑えつつも、今と同水準の生産量を維持できる栽培方法を模索する研究を行っている他、新規の就農者を呼び込んで、担い手不足の解消を目指す活動をしています。
また、農協や出荷組合でも、同じ作物を作る農業者の部会を通して、病虫害に対する勉強会を行ったり、出荷最盛期が終わった頃に反省会をして情報交換を行っています。しかし、同じ作物を作る仲間であり、ライバルでもある中で、お互いの栽培ノウハウを明かしあって学ぶには難しい部分もあります。大切なのは、「産地として」、「組合として」、皆で協力して力を合わせるということです。
これまで、組合や部会などで焦点となってきたのは「どうやって栽培したら、継続的に上手に栽培できるのか」であったと思います。これに加え、これからは経営観点でお互いを比較し情報交換することを通じて施策作りをすれば、産地としての生産力の増加に繋げることにならないでしょうか。例えば「反収」や「作付ごとの売上・利益に対する労働時間」などの観点で情報交換すると、「お互いに、どう工夫してやっているのか?」についての発見の場とすることもできそうです。また、市・県・農協等の団体と、評価観点を同じにすれば(共通の指標を設けるなど)、蓄積したノウハウを共有することも出来ます。
私たちは、これらの要素である、「作付毎の売上や利益の把握」「就業者の労働時間管理」「肥料や農薬の散布時期」「指標の共通化」等々の把握や整理にITを活用することが有効だと考えています。
農業従事者の高齢化と担い手不足、栽培ノウハウの伝承は、簡単に解決できる問題ではありません。私たちは、これからも、「農業×IT」で農業に関わる皆さまのお役に立てるよう努力してまいります。
執筆者情報
株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。