
レタス栽培における高温障害とは?原因と対策を解説
近年の異常気象による影響で、春から夏、ひいては秋にかけての高温期にレタスを栽培するのが難しくなって来ています。
この記事では、レタス栽培で起こる高温障害の具体的な症状、そして収穫減を最小限に抑えるための実践的な対策について、詳しくご紹介していきます。
レタス栽培における高温障害とは
レタスの生育と高温障害の主な症状
レタスは冷涼な気候を好む葉物野菜です。諸説ありますが、その生育適温は15〜20℃とされており、適温以上の温度で栽培すると、生育上さまざまな影響が現れます。
葉の縁が茶色く枯れる「チップバーン」
チップバーンは、若い葉を中心に葉の先端や葉先の縁の周辺が茶色く変色して枯れる症状です。これは、高温によって水分の蒸散が活発になることで、葉の先端までカルシウムが行き渡らなくなり、欠乏状態になることが原因で発生します。一度チップバーンが発生すると、その部分は回復しないため、商品価値が著しく低下します。
結球不良や生育遅延
結球タイプのレタスの場合、高温が結球期に当たると、葉がうまく巻き込まれず、結球がゆるくなったり、全く結球しなくなったりすることがあります。また、生育全体が遅れることで、収穫時期がずれ込み収穫・出荷の計画に大きな影響を与える可能性があります。
高温条件により促進される抽苔(ちゅうだい)
レタスは、一定の高温が続くと、花を咲かせるために茎を伸ばし始めることがあります。これを薹立ち(以下、とう立ち、別名「抽苔(ちゅうだい)」)と呼び、一度、とう立ちが始まると、葉が堅くなり、苦味が増すため、食用に適さなくなります。これにより、収穫できるレタスが激減し、損失につながります。
※レタスの抽苔は、温度条件だけでなく日長によっても影響を受けます。春から初夏にかけての日照時間が長い時期は、レタスが抽苔しやすい長日条件です。
今すぐできる!レタス栽培の高温対策
圃場環境の改善
高温障害を防ぐためには、まず圃場の温度を下げ、レタスが水分を十分に吸収できる環境を整えることが大切です。
遮光資材の活用
ハウス栽培の場合は、遮光ネットを設置することで、直射日光を防いで日中の温度上昇を抑制します。遮光率が異なるネットを使い分けることで、温度管理と光合成を両立させることが可能です。
マルチング
敷きわらや白色マルチを地表に使うことで、地温の極端な上昇を防ぎ、土壌の乾燥防止に役立ちます。
適切な灌水
高温期は、レタスの水分の蒸散が激しくなるため、こまめな灌水が必要です。しかし、過剰な灌水は根腐れや病害の原因になるため、土壌の乾燥具合を常にチェックし、適度な水分を保つことが重要です。
通気性の確保
株間を適切に保って栽培したり間引きをしたりして、密植を避け、風通しをよくして温度上昇を防ぎましょう。また、レタスの下葉を適度に取り除くことで、株元の通気性を向上させることも可能です。
播種時期の検討・品種選びの重要性
播種時期
レタスは、本葉12~13枚の結球開始時期に気温が高く日照時間の長い長日条件に重なると、花芽の形成が促されてとう立ちしやすくなります。これを抑えるには、結球する時期が高温期に重ならないように、栽培地の気象条件に合わせて播種時期をずらす必要があります。
耐暑性・晩抽性(ばんちゅうせい)の品種を活用する
栽培時期に応じて、高温に強い品種(耐暑性の強い品種)を選ぶことで、高温障害のリスクを減らすことができます。また、種苗会社が提供する品種情報には「高温環境下で抽苔しやすいのか、しにくいのか」の程度を指す「抽苔性」の情報があります。「晩抽性」と記載のある品種であれば、高温下でもとう立ちしにくい品種です。これらの品種の見極めを行って栽培することで、高温障害の被害の軽減に期待ができます。
施肥管理
カルシウムの補給
チップバーンを防ぐには、カルシウムの適切な補給が大切です。葉面散布剤や土壌改良資材、液体肥料には、効果的にカルシウム不足を改善できるものもあるので、積極的に活用しましょう。
これらの対策を組み合わせて活用し、高温障害に負けないレタスの栽培を実現しましょう。
まとめ
この記事では、レタスの高温障害について解説しました。冷涼な気候を好むレタスの栽培において、近年の高温環境は栽培を制限させる、難しくて悩ましい問題です。安定したレタス生産を目指して、今回紹介した対策方法をぜひ実践してみてください。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。