トマトをアブラムシから守る方法!原因や症状をわかりやすく解説

トマトをアブラムシから守る方法!原因や症状をわかりやすく解説

アブラムシは、トマトに限らずさまざまな作物に被害を与える厄介な害虫の一種です。

本記事では、アブラムシがトマトに与える影響を詳しく解説し、具体的な駆除方法や予防策をご紹介します。アブラムシの被害を最小限に抑えるための実践的な知識を身につけ、健康なトマトの生育を実現しましょう。

データ活用で農業経営を改善する方法をご紹介!時間当たり農業所得をもとに経営を改善する方法とは? ノウハウ資料をダウンロード

アブラムシとは?

アブラムシは、トマトをはじめ多くの植物に被害を与える最も一般的な害虫の一種です。体長は成虫状態で1〜3mm程度(幼虫の時期はさらに小さい)。主に群生して植物に寄生します。

成虫・幼虫ともに、葉や茎、果実から吸汁しますが、アブラムシ類自体が小さいため、他の作物に見られるような甚大な被害はトマトには及びません。ただし、トマトの株にアブラムシが寄生すると、葉が丸まって縮れたり、場合によっては部分的に黄褐色になったりするなどの症状が現れます。また、アブラムシが吸汁して大量の排せつ物を出すと、粘着性のある排せつ物を足場にしてすす病菌が繁殖します。すると、葉全体が黒く汚れて光合成が妨げられ、株全体の活力がなくなるばかりか、結果として収量減少につながります。さらに、アブラムシは、葉や果実を吸汁する際にモザイク病などのウイルスを媒介することもあるため注意が必要です。

多くの種類が存在しますが、トマトに寄生しやすい代表的な種類として「ワタアブラムシ」や「モモアカアブラムシ」、「ジャガイモヒゲナガアブラムシ」「チューリップヒゲナガアブラムシ」が挙げられます。これらのアブラムシは、短期間で大量に増殖するため、早期発見と適切な防除が必要です。

アブラムシの発生原因と時期

アブラムシの発生は主に環境条件に左右されます。気温が15〜25℃程度の春から初夏、または秋の涼しい時期に特に多く見られます。このような温暖な気候では、アブラムシは、毎日数匹~十数匹の子どもを産んで、それらが10日前後で成虫になるため、短期間で急速に増殖します。発生しやすい環境要因として以下が挙げられます。

窒素肥料の過剰施用

窒素分の多い肥料を過剰に施用すると、葉や茎が大きく成長する一方で、植物の体内で合成されるアミノ酸が多くなりすぎてしまいます。すると、アミノ酸を好物とするアブラムシにとって絶好の寄生場所になってしまいます。また、過剰な窒素は植物の健康状態を損ね、病害虫への耐性を低下させる原因になります。

風通しの悪い栽培環境

栽植密度が高く株が密集した圃場では、風通しが悪くなります。このような環境は湿度が高まり、アブラムシが繁殖しやすい条件を作り出します。また、風通しが悪いと、アブラムシの天敵である捕食性の昆虫(テントウムシなど)が近づきにくくなるため、アブラムシの個体数が抑えられなくなります。

雑草の放置

圃場やその周辺の雑草を放置すると、アブラムシの発生源となる場合があります。雑草はアブラムシのエサ場や繁殖地として機能するため、雑草から作物にアブラムシが移動するリスクが高まります。

特に、有翅型と呼ばれる(羽のある)アブラムシの飛来によって、モザイク病などのウイルス病が媒介されるため、飛来元となる周辺の雑草を除いて圃場を清潔に保つことが、アブラムシの被害を抑えるための基本的な対策となります。

トマトのアブラムシを駆除する方法

トマトに発生したアブラムシを駆除するためには、状況や発生規模に応じた適切な対策を採ることが重要です。以下で、駆除方法を詳しく解説します。

1. 物理的な駆除方法

アブラムシは植物の葉や茎に寄生するため、直接取り除く物理的な方法が効果的です。この方法は、発生数が少ない初期段階で有効です。

アブラムシを手で取り除く

アブラムシがまだ少数の場合、手袋を装着して葉や茎から直接取り除く方法があります。この際、虫が残らないように葉の裏側や茎の隙間までしっかり確認することが重要です。

水で洗い流す

アブラムシは水に弱いため、ホースを使って葉や茎に付着したアブラムシを洗い流すことが効果的です。水圧を調整しながら葉の裏側にも水を当てるようにしましょう。ただし、勢いが強すぎると植物を傷めてしまう可能性があるため、注意が必要です。

粘着テープを使用する

粘着テープを使って、葉や茎に付着したアブラムシを取り除くこともできます。テープを優しく押し当てて剝がすことで、アブラムシを効率よく除去できます。ただし、葉を傷つけないように慎重に行うことがポイントです。

2. 無農薬スプレーを活用

無農薬スプレーは、環境に優しく、人や動植物に対する安全性が高い方法として注目されています。有機栽培や化学農薬を制限して栽培する場合に適しており、手軽に使用できるのが特徴です。

牛乳スプレー

牛乳を希釈してスプレーすると、牛乳が乾燥する過程でアブラムシの呼吸を妨げ、駆除効果を発揮します。葉の裏側を中心にスプレーし、数時間後に水で洗い流してください。放置すると牛乳の臭いやカビが発生する恐れがあるため、スプレー後の処理は忘れないようにしましょう。

石けん水スプレー

家庭用の食器用洗剤や固形せっけんなどと食用油(サラダオイルなど)を水と混ぜて希釈し、スプレーする方法もインターネット上では多く見られます。アブラムシを窒息させて、駆除効果を発揮します。ただし、濃度が高すぎると植物を傷める可能性もあるようです。散布後は、きれいに洗い流してください。

木酢液スプレー

木酢液は植物由来の成分で作られており、アブラムシを忌避する効果があります。木酢液を水で200~400倍程度に希釈し、葉や茎にスプレーしてください。これにより、アブラムシが植物に近づきにくくなるため、予防効果としても期待できます。ただし、植物の葉面に散布する場合には、いきなり200〜400倍の溶液を散布しないようにしましょう。希釈したつもりでも、植物にとっては高濃度な可能性もあります。徐々に濃度をあげていくことを心がけましょう。

3. 市販の農薬を使用

発生が広範囲に及び、物理的・無農薬の方法では十分な効果が得られない場合、市販の農薬を使用することが必要です。農薬を使う際には、農薬の適切な選択と使用方法を守ることが重要です。

トマトに適用のある農薬を選ぶ

市販の農薬には、アブラムシ専用のものや広範囲の害虫に対応できるものがあります。トマト栽培に適用可能な農薬を選び、必ずラベルに記載された適用作物や使用方法を確認してください。

散布のタイミングを工夫する

農薬の散布は、朝や夕方の涼しい時間帯に散布することが推奨されます。特に夏場の日中、気温が高い時間帯に散布することは、散布した薬液の水分が急激に蒸発して、高濃度の薬剤を散布したのと同様になって薬害になる可能性があります。また、雨が降る前後の散布や風の強い日の散布は避けるようにしましょう。

薬剤のローテーション

アブラムシは同じ種類の農薬を繰り返し使用すると耐性を持つ可能性があります。そのため、作用機構の異なる複数の農薬をローテーションで使用することが推奨されます。

アブラムシを防ぐ予防策

アブラムシの発生を未然に防ぐためには、環境管理や日々の観察が欠かせません。以下に、具体的な予防策を詳しく解説します。

1. 防虫ネットやシルバーマルチの活用

アブラムシの発生を未然に防ぐためには、発生リスクを減らすための適切な予防策を組み合わせて行うことが効果的です。

防虫ネットの選び方と設置のポイント

目の細かい防虫ネット(0.6~0.8mm目合い)が効果的です。アブラムシは非常に小さいため、粗いネットでは侵入を許してしまうことがあります。ネットの設置は苗を植え付ける時期から行うのが理想的です。

防虫ネットでトマトの圃場全体を覆い、隙間ができないよう地面との接続部をしっかり固定します。トンネル状の設置にするなど全体を覆う方法が一般的です。

シルバーマルチの使用方法

シルバーマルチは、地面に敷く銀色の反射材ですが、害虫の忌避効果があります。アブラムシは銀色の反射光を嫌う性質があるため、畝にシルバーマルチを敷くことで、飛来を防ぐことができます。

土壌の乾燥や雑草防止効果もあるため、一石二鳥の効果が期待できます。特にハウス栽培では防虫ネットとの併用が効果的です。

2. コンパニオンプランツの導入

コンパニオンプランツは、害虫を寄せ付けにくい効果を持つ植物をトマトと一緒に植える方法です。アブラムシを防ぐためには、以下の植物が効果的です。

ネギやニラ

ネギやニラは特有の香りを持ち、アブラムシを寄せ付けにくくします。トマトの株間や周囲に植えると、効果が期待できます。

ハーブ類(ミントやバジル)

ハーブの香りもアブラムシを忌避する効果があります。特にバジルでは、水分を好むバジルとの混植によって、やや乾燥気味に栽培した方がよいトマトとの土壌中の水分量を適度な状態に保って生育を助けるとも言われています。

マリーゴールド

マリーゴールドはアブラムシだけでなく、コナジラミなどの害虫も防ぐ効果があります。さらに、連作の際に問題となるネコブセンチュウの抑制にも効果があるため、トマトがかかりやすい根の病気から守ることもできます。

コンパニオンプランツは農薬に頼らない自然な防除方法ですが、密集しすぎると、逆に生育を阻害してしまう場合もあるため、適切な間隔をあけるようにしましょう。

3. 日々の観察と雑草管理

アブラムシの早期発見と予防には、日々の観察が欠かせません。以下の点に注意して観察を行いましょう。

葉の裏を確認

アブラムシは葉の裏に潜むことが多いため、葉の表面だけでなく裏側もこまめに確認することが重要です。黄色い斑点や葉の縮れが見られる場合は、早期に対策を講じましょう。

雑草の除去

雑草はアブラムシの温床となりやすい環境です。特にトマト周辺に生える雑草はアブラムシを呼び込む原因となるため、定期的に除草作業を行いましょう。雑草は根から引き抜き、圃場の外で処分することで再発を防ぎます。

粘着版(粘着トラップ)の利用

黄色の粘着板を使用することで、アブラムシの発生状況をモニタリングできます。定期的に取り換えて、粘着トラップに付着したアブラムシの数を数えることで、前後の期間におけるアブラムシの個体数の変化を推測することが可能です。粘着トラップに付着したアブラムシの数が増えてきたら、本格的な防除対策を行うサインと考えられます。

4. 適切な栽培環境の整備

アブラムシを防ぐには、トマトが健全に育つ栽培環境を整えることが重要です。環境が適切であれば、トマト自身の免疫力が高まり、害虫への抵抗力も強くなります。

風通しをよくする

トマトの株間を適切に保ち、葉が密集しすぎないように摘葉を行います。これにより、風通しが改善され、アブラムシの発生を抑えることができます。特に下部の葉を取り除くことで、株元の湿気を防ぎ、害虫が繁殖しにくい環境を作ることが可能です。

適切な施肥管理

窒素肥料の過剰施用はアブラムシを引き寄せる原因となります。肥料の与えすぎはアブラムシだけでなく、トマトの病気の原因にもなります。

まとめ

アブラムシはトマト栽培において見逃せない害虫の一つです。早期発見と迅速な対策が被害を最小限に抑える鍵となります。駆除には、物理的な方法や無農薬スプレー、市販の農薬を活用し、さらに予防策として防虫ネットやコンパニオンプランツなどの導入を組み合わせることが効果的です。

日々の観察と管理を徹底し、アブラムシに強い栽培環境にすることで、健康なトマトの生育を実現しましょう。この記事で紹介した方法を実践し、安定した収穫を目指してください。

執筆者情報

株式会社ユニリタ アグリビジネスチーム

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム

ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。

日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。

お問い合わせ

ベジパレットに関するお問い合わせは
お気軽にお寄せください。

無料トライアル

ベジパレットの全ての機能を
無料で3カ月間お試しいただけます。

詳しい資料

ベジパレットの活用方法やユースケースがわかる資料を無料でダウンロードいただけます。