
トマトのモザイク病対策:原因、症状、効果的な防除・予防法
トマト栽培農家にとって「モザイク病」は見過ごせない課題の一つです。
本記事では、トマトのモザイク病の原因や具体的な症状をはじめ、効果的な防除・予防策をわかりやすく解説します。トマトを守る知識が収量アップへの第一歩!
トマトのモザイク病とは?
モザイク病は、トマトをはじめとするさまざまな植物に影響を与えるウイルス性の病害です。特にトマトでは、葉や果実にモザイク模様のような斑点や変色を引き起こし、生育に大きな支障をきたします。感染力が高く、放置すると圃場全体に広がって、農作物の品質と収量に悪影響を与えるため、早期発見と予防が重要です。
モザイク病の特徴
モザイク病の特徴は、主に以下のような点に現れます。
葉の症状
葉の表面に黄色や濃緑が混じったまだら模様が現れます。これが「モザイク模様」と呼ばれ、病名の由来になっています。このまだら模様は不規則な形状で比較的早い段階で確認できるため、初期症状が現れたトマトの株を発見する目安となります。症状が進行すると、葉が縮れたりねじれたりして正常な形状を保てなくなり、光合成能力が低下します。
果実の異常
果実は通常の形に成長せず、凹凸のある不規則な形状になったり、黄化したり壊疽が見られます。これらの奇形果や斑点果は、市場での低評価につながって、消費者からも敬遠されるばかりか、良品率の著しい低下を招いて、農家の収益に深刻な影響を及ぼします。
生育不良
モザイク病に感染したトマトは、植物全体の成長が大きく阻害されます。茎や枝が十分に伸びず、葉や果実が小さくなるなどの成長抑制(わい化症状)が見られます。
原因となるウイルスとその伝染経路
モザイク病は複数のウイルスによって引き起こされます。トマトに影響を与える主なウイルスは以下の通りです。
- トマトモザイクウイルス(TMV/ToMV)
- キュウリモザイクウイルス(CMV)
- トマトアスパーミーウイルス(TAV)
これらのウイルスは、その種類によっても異なりますが、以下の経路で伝染します。
- 害虫による媒介:
アブラムシ類を媒介して伝染します。
種類によってはセイヨウオオマルハナバチなどの訪花昆虫によっても感染します。 - 接触感染:
脇芽の切除や摘葉等の農作業で使用した手袋や農具を通じて汁液によって感染します。 - 土壌中の残渣(収穫後の植物の残り):
感染した植物の残骸が土中に残って、次に栽培する作物に伝染します。
モザイク病が発生した場合の対処法
モザイク病が発生した場合、迅速かつ適切な対応が必要です。まず、感染した株を早急に取り除き、圃場の外で焼却や密閉処分を行うことで、ウイルスの拡散を防ぎます。次に、施設や農具を徹底的に消毒し、ウイルスが再び広がらないようにします。消毒剤を使い、特に農具や作業用手袋などの接触面を清潔に保つことが重要です。一度、感染してしまった場合、農薬を散布しても植物体内にいるウイルスを退治することは難しく、病状は改善されません。いかに未然に防ぐかが重要です。
モザイク病を防ぐための予防策
モザイク病を防ぐためには、日々の管理や衛生的な環境づくりを徹底することが欠かせません。以下に具体的な予防策を紹介します。
ウイルスを媒介する害虫への対策
モザイク病の主な原因の一つは、ウイルスを媒介する害虫の存在です。特にアブラムシがウイルスを運ぶ原因となるため、アブラムシの発生を抑える対策がモザイク病対策としても有効です。
物理的な防除:忌避効果のある被覆材・防虫ネットの使用
シルバーマルチやシルバーテープを使うと反射光によるアブラムシへの忌避効果が期待できます。また、防虫ネットを設置することでアブラムシの侵入や飛来を防ぐことができます。
殺虫剤の活用
アブラムシ類の防除には殺虫剤をはじめとした農薬が有効です。ただし、アブラムシ類には、テントウムシなどの自然界の天敵も多く存在します。農薬を選択する際は、アブラムシに薬剤抵抗性を付与しないようなローテーション散布を基本としつつ、これら天敵への影響の少ない農薬を選ぶことも大切です。
圃場周辺の雑草除去
圃場の周辺に生える雑草はアブラムシ類のみならず、害虫の温床となるため、こまめに取り除き清潔な環境を維持することが予防策の一環となります。
農作業時の衛生管理
モザイク病は接触感染によっても広がるため、農作業時の衛生管理を徹底することが必要です。
手袋や農具の消毒
作業用手袋や農具は、使用後に必ず消毒を行いましょう。次亜塩素酸ナトリウムなどを使用することで、ウイルスの拡散を防ぐことができます。
作業の順番を工夫
作業の順番にも工夫が必要です。まず健康な株から作業を始め、感染が疑われる株は最後に対応するようにすることで、他の株への感染リスクを抑えることができます。さらに、農具を畑ごとに分けて使用するなど、感染経路を最小限にする工夫も効果的です。
土壌と環境の改善
モザイク病のリスクを減らすには、土壌や栽培環境の改善も大切です。
連作を避ける
土壌中の植物残渣(ウイルスに感染した残渣)を通して感染するため、発病が確認された圃場で連作を避けることは重要なポイントです。どうしても、同じ圃場で栽培しなければならない場合には、堆肥投入や太陽熱消毒などでトマト残渣や残根を十分に腐らせる(腐らせて土壌中にウイルスを露出させる)ことで、ウイルスを不活化しやすくすることが可能です。
抵抗性品種の選定
モザイク病に強い抵抗性品種を選ぶことで、感染リスクを大幅に軽減することができます。そのため、抵抗性・耐病性のある品種を選んで栽培することも、防除対策としては有効です。ただし、抵抗性品種であっても抵抗性を打破されてモザイク病に感染するケースもあるため、品種に関わらず、防除対策を心掛けることが大切です。
まとめ
モザイク病は、トマト栽培において大きなリスクとなる病害です。しかし、日々の管理や予防策を徹底することで、感染リスクを大幅に低減することができます。害虫対策や衛生管理、抵抗性品種の選定などを組み合わせ、モザイク病に強い栽培環境を心掛けましょう。この記事で紹介した方法を活用し、大切なトマトを病害から守り、豊かな収穫を目指してください。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。