スマート農業とは?代表的な技術とその活用方法を紹介
スマート農業とは、先進技術を活用して農業の効率化や生産性向上を図る手法のことです。
最近、日本国内でもスマート農業の導入が進んでおり、そのメリットに注目が集まっています。
例えば、ドローンやIoT(モノのインターネット)を活用した作物の管理や、AIを使ったデータ分析などがトレンドとなっています。
そこで、この記事ではスマート農業の代表的な技術とその活用方法について、詳しくご紹介します。
スマート農業とは
スマート農業とは、先進技術を活用して農業の効率化や生産性向上を図る手法のことです。
具体的には、ドローンやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などを駆使して、従来の農業に新たな価値を提供する取り組みを指します。
これにより、労働力の不足や気候変動などの課題に対応しながら、持続可能な農業の実現を目指しています。
スマート農業の歴史と背景
スマート農業の概念は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて広まり始めました。
当初はGPS技術を使った精密農業が主流でしたが、近年ではAIやビッグデータ解析の進展により、より高度な技術が導入されています。
日本国内では、農業人口の減少や高齢化に対応するために、スマート農業の導入が進められているケースが見受けられます。
失敗しないスマート農業活用方法
スマート農業という言葉が世に出てから、既に25年が経過していることに驚きを感じますが、一足飛びに普及しないのには、理由があるはずです。
スマート農業は、先進技術を駆使して農業の効率化や生産性向上を図る取り組みのことですが、すべての農家に「均一の効果」が得られるかどうかは疑問です。
これは、スマート農業を否定しているわけではありません。逆に、効果が得られる可能性は多大にあり、活用を進めたいところです。
ただ、農場ごとの状況を正しく分析し、効果を得やすい、感じやすいところから導入することをおすすめします。導入の効果を感じられれば、次の改善に取り組む意欲が湧いてくるからです。
その結果、初めは小さな効果でも、その効果を感じることが重要で、次の改善につなげることが大切だといえます。自身の農業経営に目を向け、課題を認識し「改善のスパイラル」につなげられれば、しめたものです。
効果を得やすいスマート農業とは?
では、効果を得やすいスマート農業とは何でしょうか?
それぞれの農場で十人十色、異なる可能性はありますが、自分の農場と共通項の多い農場の取り組みを見つけると良いということはいえます。似ている課題が多分にあるため、その先駆者の経験が自農場のお手本になる可能性があるからです。これが成功の可能性を上げることにつながるでしょう。
見つけるべき「共通項」とは?
では、見つけるべき「共通項」とは何でしょうか?これは「共通の課題」と考えるとわかりやすいでしょう。
自身の農場と効果を上げている農場の共通項を見つけるためにも、まずは「今の自分の農業経営の課題を知ること」から開始すべきです。
スマート農業はあくまでもツール(道具)であり、ただ導入すれば期待通りの効果が出るというものでもないからです。
最初に行うべきなのは、農業経営の「可視化」
初めに行うことは自身の農業経営の把握、つまり可視化です。可視化することで、改善すべき「顕在化していない課題」が見えてくるからです。改善したいと思う課題が1つの農場もあれば、複数の課題が見えてくる農場もあるはずです。
可視化が正しく行えれば、複数の課題が見えてくるようになるでしょう。
課題が複数あっても改善する優先順位をつけて対応すれば良いのです。一度に課題解決を目指すことには、誰しも不安を覚えるはずです。そこで、効果が出そうな1つの改善を積み重ねていき、PDCAを回せる農業経営をご提案します。
ここで重要なのは、先にも述べた「効果が出そうな1つを選択する」ことです。その改善のテーマに対し、最適なスマート農業を取り入れ、改善のスピードを上げるという活用の仕方をユニリタは提案します。
スマート農業への期待
まずは、スマート農業を活用する目的と、そのメリットをテーマ分けしてみましょう。
生産性の向上
スマート農業の最大の目的の一つは、「生産性の向上」です。
トラクターの導入で農業の生産性は明らかに向上しました。これを疑う人はいないはずです。
現在はさらにセンサーやAIを駆使し、自動化も進んでいます。人手不足も補える技術です。
また、施設栽培ではハウスの換気も環境制御装置に搭載されたセンサーによってデータ収集し、ある値を超えたら開閉装置と連動するようになっています。これにより、急な雨でハウスの換気調整に行かずとも生育環境を維持できるようになりました。これは、生産者の労力軽減にもつながっています。
水田の水位管理も同様です。広大な水田を何十枚、何百枚も持つ生産者にとっては、水位のチェックだけでも相当の時間を要します。今や手放せないシステムといえます。
栽培環境の最適化も生産性向上の一つと考えられるかもしれません。農産物を栽培するうえでの光合成の最大化は目を見張る効果があります。潅水を適切なタイミングで行ったり、農薬散布もロボットを利用して病虫害がいる場所をセンサーなどで特定して局所散布したり、スマート農業の活躍はとどまるところを知りません。
人材不足(労働力)の軽減
生産者の高齢化や担い手不足、労働力不足が深刻化する中で、スマート農業は労働力の軽減にも大きく寄与します。
上でも述べた、自動化されたトラクターや収穫ロボットの導入により、異常気象が定常化している労働環境での生産者の作業負荷減少に役立っています。農作業の半分、もしくはそれ以上を占めると言われている収穫作業。これも収穫ロボットを活用することでの効果は大きいものがあります。
ロボットは疲れを知らず、夜間でも収穫作業を継続可能です。翌朝、生産者が圃場に赴くと、整然と並んだ野菜が調整作業の工程を待っている・・・というようなことがすでに実現されています。
ロボットにはセンサーが搭載されており、収穫適期を見定め、収穫のタイミングを最適化することができるので、結果として品質も向上します。調整作業の負荷も軽減されます。
環境配慮、持続可能な農業の実現
スマート農業では、環境への配慮も重要な要素となっています。
AIとIoT技術を活用することで、適切なタイミングでの施肥や農薬の使用を可能にし、環境負荷を最小限に抑えることができます。
例えば、センサーによって土壌の栄養状態をリアルタイムで監視し、不足している栄養素だけを適量施肥することで、過剰な肥料の使用を防げます。
農薬の使用においても、病害虫の発生場所をピンポイントで特定することで最低限の量だけを散布することができます。
これにより、農薬による環境への影響を減らしつつ、効果的な病害虫対策を行うことにつながります。
では、スマート農業が叫ばれて久しい昨今で、どのような手段(ツール)があるのかを見ていきましょう。
スマート農業を支える技術
スマート農業を支える主な技術をご紹介します。
センサー技術
温度、湿度、土壌水分量、日射量などを計測するセンサーを設置することで、作物の栽培環境をリアルタイムに把握することができます。
従来の農業では、勘と経験に頼って栽培環境を判断することが多くありましたが、センサー技術を使うことで、より客観的で精度の高い情報を得ることが可能になります。
センサーから得られたデータは、リアルタイムでクラウドなどに送信され、生産者はいつでもどこでも確認することができます。
GPS
GPSは、農機具の自動運転や走行軌跡の記録に活用されるスマート農業を支える技術です。
自動運転トラクターでは、GPSによって正確な位置情報を取得することで、人手に頼らないトラクターの運転(直進や旋回)が可能になります。これにより、生産者の負担を軽減するだけでなく、正確な耕耘作業を実現します。
また、位置情報とともに土壌の情報や植生の情報を処理することで、圃場内の場所ごとに最適な量の肥料や農薬を自動で散布することができます。この結果、資源の無駄を省いて環境負荷を低減できます。
ドローン
ドローンは、上空から圃場全体を撮影することで、従来の方法では把握が難しかった情報を得ることが可能です。広範囲の圃場を空から撮影し、生育状況のムラや病害虫の発生状況などを効率的に把握することができます。
また、マルチスペクトルカメラを搭載したドローンを使用することで、植物の生育に必要な栄養状態(NDVIなど)を分析し、施肥量を調整する精密農業にも活用が進んでいます。
AI・データ分析
センサーやドローンなどから収集した膨大なデータは、AIを活用した分析によって、より高度な農業経営を支援する情報へと生まれ変わります。収集した膨大なデータをAIで分析することで、収量予測、病害虫発生予測、最適な肥料散布量などの高度な判断が可能になります。
ロボット技術
ロボット技術は、農作業の自動化を支える重要な技術です。農業用ロボットを活用することで、播種、収穫、除草などの反復的な作業が効率的に行えます。
- 自動収穫ロボット:センサーとAIを組み合わせたロボットが、これまで人手に頼ってきた収穫作業を支援します。人手よる収穫に比べ、正確な収穫品質が実現できます。
- 除草ロボット:センサーとAIを組み合わせたロボットで雑草を自動で識別し、物理的または化学的に除去することが可能です。除草剤の使用を最小限に抑え、環境への負荷を軽減することができます。
IoT(モノのインターネット)
IoT技術は、農場内のあらゆるデバイスをネットワークに接続し、データをリアルタイムで収集・分析するために活用できます。
- 遠隔監視・自動制御:IoTを利用して、スマートフォンやタブレットから遠隔で農場の状態を監視し、灌漑や温度管理などを自動で制御することができます。
この結果、天候や環境の変化に迅速に対応して農作物の最適な栽培環境を維持できます。 - データ統合:IoTでは、農場の各種センサーから集められたデータをクラウド上で統合します。さらに、AIがこのデータを解析し、最適な農業施策を提案してくれます。
その結果、効率的な資源利用が可能となり、コスト削減と収益向上が期待できます。
ブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術は、取引の透明性と信頼性を確保するのに役立ちます。農産物のトレーサビリティを強化し、食品の安全性を向上させるために活用可能です。
- 生産履歴の追跡:ブロックチェーンが農作物の生産から収穫、流通までのすべての履歴を改ざん不可能な形で記録します。
この結果、消費者は購入した農産物の生産過程を安心して確認できるため、食品の信頼性を担保します。 - 品質管理と食品安全:ブロックチェーン技術を通して、生産の各段階での品質検査結果をリアルタイムで共有することが可能です。
この結果、問題が発生した場合に迅速に対応できるようになり、食品の安全性の保証に寄与します。
収支や経営の可視化を行うには「ベジパレット」がおすすめ
スマート農業に着手したら、まず取り組んでいただきたいのが現状の「可視化」であることについては、「最初に行うべきなのは、農業経営の「可視化」」でもご紹介しました。 この時に活用したいツールが「ベジパレット」です。
ベジパレットとは
ベジパレットは、農業経営の効率化と生産性向上を支援するためのツールです。
農業経営に必要なデータを一元管理し、リアルタイムでの分析と意思決定をサポートします。
ベジパレットの機能
具体的には、ベジパレットは以下のような機能を提供します。
収支機能による営農活動の改善点可視化
ベジパレットの収支機能は、農業経営における収支状況を詳細に把握するための機能です。
この機能を利用することで、各営農活動の収支を正確に記録し、どの作業や作物が利益を生み出しているかを可視化することができます。
例えば、特定の作物の栽培において、収入に対するコストが高すぎる場合、その原因を特定し、改善策を講じることが可能です。
また、収支データを基にした分析により、無駄な経費の削減や効率的な資金運用が実現できます。
集計機能による農業経営の支援
ベジパレットの集計機能は、膨大な農業データを一元的に管理し、必要な情報を迅速に集計・分析することができます。
これにより、日々の経営判断がデータにもとづいて行えるようになります。
例えば、収穫量や売り上げ、コストなどのデータを自動で集計し、グラフや表形式で視覚的に表示することで、現状を直感的に把握できます。
また、過去のデータと比較することで、成長トレンドや季節ごとの変動を分析し、将来的な計画を立てるための有力な情報を提供します。
ダッシュボード機能による農業経営の可視化
ベジパレットのダッシュボード機能は、農業経営において重要なデータを一画面でリアルタイムに確認できる機能です。
ベジパレット利用者は自身のニーズに合わせて表示項目をカスタマイズすることができ、必要な情報を迅速に取得することが可能です。
例えば、収益性の高い作物や作付(品種)・圃場の判断を可能にしたり、計画上の経費に対してどの程度の利用が進んでいるのかを一目で把握したりできるようになります。この機能により、迅速な意思決定が可能となり、経営の効率化が図れます。
ユニリタの思い
ユニリタはまず、各農場の課題を「圃場単位、かつ作付け単位」に収支の観点から可視化し、改善効果の高い課題をデータでお伝えすることで貢献します。
それぞれ異なる皆様の圃場の課題をデータ化し、「取り組む前」と「取り組んだ後」の効果測定をすることが、次への「改善のチカラになる」ことを信じています。
スマート農業をうまく活用し、「実現したい農場」を手に入れませんか?ユニリタはその夢を「ベジパレット」で応援します。
まとめ
「スマート農業を支える技術」でご紹介したような技術は、あくまでも「ツール(道具)」であり、すべての農場が同じように取り組めば同じ効果を生むというわけではありません。
ユニリタでは、生産性に課題を持つ農場、労働者不足で出荷が間に合わない課題を持つ農場、それぞれ取り組む順番、採用する道具は異なって良いと考えます。
自身の農場の課題を可視化して優先順位を付け、PDCAのサイクルを回す中で、効果を実感して、さらに次の改善に取り組む・・・そのスパイラルを手に入れませんか?
執筆者情報
株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。