農業経営におけるデータの活用「積算温度の活用」
今回は、栽培現場におけるデータの活用例として「積算温度」に着目したいと思います。
農業経営における記録やデータと、その活用方法を深めることで、躊躇されがちな「記録を取り続けること」の意義を見直したいと思います。
トマトでは、開花後の積算温度が1,000~1,100℃になった頃に果実が色づき収穫できるようになるのは有名な話です。果菜類のみならず、洋菜類などの露地野菜でも、播種日からの積算温度による収穫時期の予測が可能で、取引先への営業や交渉などで活用されています。
事前に収穫時期の推定ができることで、以下のような活用ができると考えます。
- 出荷時期について販売先への事前伝達による積極的な営業・交渉
- 推定収穫時期の売上金額をシミュレーションすることで、年間の売上見通しの検討
※予想収量、販売単価の検討が必要です。 - 収穫作業にあたる人員の確保(何人必要か?)といった雇用計画への利用
- 同一作物を複数の作付にて栽培する場合:播種(または定植)の数量の調整
※限られたマンパワーで無理なく収穫できる播種数(定植数)への調整 - 同一作物を複数の作付にて栽培する場合:収穫時期を意識した播種日の微調整
※特に早春に収穫の作物や作付では、春先になって1日の平均気温が急激に上昇するため、遅れて播種した作付の成長が追いつき易い。収穫時期が被って人員不足に陥るのを回避するための、播種日の調整。
収集するデータについて
毎日の平均気温のデータが必要です。播種(定植)したばかりの作付の将来の収穫時期を見定めるには、先々の平均気温が必要になりますが、推定するのは難しいので、気象庁が公表する気温データ(昨年の気温など)を利用することができます。また、環境モニタリング装置をお持ちの方であれば、昨年同時期の平均気温を活用可能です。平均気温のデータが揃ったら、収穫までに必要な積算温度に当てはめて、何日後の収穫になるのか計算できます。
収穫時期までの積算温度は、野菜によって大まかに決まっているものの、品種(早生や晩生など)によっても異なります。また、種袋には播種後◯◯日で収穫などの記載もありますが、栽培時期や場所によっても異なります。そのため、一度栽培した際の記録を元に播種後(もしくは定植後)〇〇日後に収穫開始、△△日後に収穫盛期であったという実データの裏付けがあると、詳細な積算温度の推定に役立ちます。
※補足
平均温度については、1日の最高気温と最低気温の合計の按分でも良いですが、できれば1時間毎の温度の合計を24で按分し算出したいです。数値が微妙に異なります。
収穫時期の予想は、売上計画の達成シミュレーションに活用できるだけでなく、年間通した圃場の利用計画と栽培作物の切り替えの際にも重要です。また、播種や定植の数量の調整はかかる労力や人件費、資材代などのコストへも影響します。データの活用を通して、皆様の農業経営の収支改善にお役立ていただけたら幸いです。
私たちは、これからも、「農業×IT」で農業に関わる皆さまのお役に立てるよう努力して参ります。
執筆者情報
株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。