農業経営におけるデータの活用「土づくり・施肥と収量」
前回に続き、農業経営における記録やデータの役割とその活用方法について検討します。活用の例を通して「農業経営において記録を取ること」の意義を考えます。今回は、栽培現場におけるデータの活用例「土づくり・施肥と収量」に着目します。
肥料の内容によって、その作物の生育や収量が変わることは、言うまでもありません。一方、肥料が同じでも、土壌の状態が異なれば(異なる圃場の場合など)、違った結果にもなります。そのため、施肥の設計には土壌診断が重要です。
しかし、土壌診断は結果の判明までに時間を要することもあり、作付の度に毎回実施するのは難しい場合もあります。そのような事情から、農業経営者の多くは、前年までの栽培実績を元に土づくり(土壌改良資材や施肥)を決定します。
「土づくり・施肥に対する収量」の関係性は一見シンプルに思えますが、実際の農業経営では、「限られた農地を遊ばせることなく、いかに効率的に利用できるか」と言う効率性と輪作を意識した圃場利用(連作障害を回避するための)を検討するため、関連する要因が非常に多くなります。その結果、「1つの要素の改善が収量の良し悪しに直接左右したのか否か」の見極めが難しくなります。従って、長年に渡る経験(データの蓄積による裏付け)が必要となるわけです。
以下、記録を元に考えられうる土づくりと収量の関係性の読み解き方の例です。
- 圃場を変更することで、収量が良くなったのか? 悪くなったのか?
→連作が回避できたから(できなかったから)良くなった(悪くなった)のか? - 緑肥など土壌改良資材の使用の結果、良くなったのか?
- 薬剤による土壌消毒の結果、良くなったのか?
- 休耕期間を設けることで、農地の地力が回復したのか?
- 設計した施肥により、収量が良くなったのか? 悪くなったのか?
また、このような結果を考察するためには、以下の記録の収集が求められます。
- 圃場情報(連作か? 輪作か?)
- 土壌診断の結果(肥料や腐植の量、土壌のPh・EC)
- 土壌改良資材の使用の有無
- 土壌消毒の実施の有無
- 施肥の内容
- 播種もしくは定植後の生育の様子
- 収量
実際、農業経営者に、土づくりについてお聞きすると多種多様な方法で収量の維持・増大に努力しているというお話をお聞きします。
年間通した かぶ の専作農家
「3~4年に一度、緑肥の栽培と土壌消毒を実施し、作付前には土壌改良資材として堆肥や酵母菌などの微生物資材の施与を行って、収量の維持に努めている。」
露地栽培:農業法人
「圃場全てに、毎年、作付する訳では無く、3年利用したら1年休耕して緑肥の栽培を実施するようにローテーションしている。」
農業経営者にとって、収量の維持と増大は必ず取り組むべき大きな課題です。
収量は直接、売上に紐づくだけでなく、使用した経費を回収することにも繋がり、安定的に収穫できる体制は経営の安定に繋がります。農業経営者は、これまで自分自身の経験と記憶をもとに試行錯誤を通じて、この大きな課題に取り組まれてきました。圃場の集約が進み経営規模の拡大を進める中、人の記憶には限界があります。農業経営者の皆さんは、課題解決を確実なものにすべくデータに基づく農業経営に取り組まれています。データを活用することで、仮説・検証のサイクルを回し、農業経営の収支改善に役立てる際に、ITの出番があります。
私たちは、これからも、「農業×IT」で農業に関わる皆さまのお役に立てるよう努力して参ります。
執筆者情報
株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。