
白菜の軟腐病を未然に防ぐ!収益最大化に向けて予防・対処法を解説
白菜栽培において、脅威の一つとなるのが軟腐病です。
この記事では、軟腐病の発生原因や、その予防策と対処法を解説します。
白菜の軟腐病とは?基礎知識と発生メカニズム
軟腐病の症状と見分け方
軟腐病の最も特徴的な症状は、葉や葉柄の地際に近い部分に水浸状の斑点ができて腐敗し、独特な悪臭を放つことです。病気が進行すると被害部分はとけて、ドロドロの状態になります。感染初期の病徴としては、外葉がしおれる、葉の付け根が変色するなどの兆候が見られます。また、台風や管理作業で葉に傷ができると一斉に発病したり、収穫後の流通過程や貯蔵段階にも発生したりするため注意が必要です。
発生原因とメカニズム
軟腐病を引き起こす細菌は土壌中に広く存在しておりますが、植物の組織がかたい樹木では発生しません。組織の柔らかい野菜や白菜などの結球野菜を栽培することで、その根圏で軟腐病菌が増殖します。その後、風雨の力を借りて地際に接している葉や葉柄の基部に到達し、害虫による食害痕や、管理作業での傷、根の損傷などから白菜の内部に侵入・感染します。
発生しやすい環境条件(高温多湿、土壌、害虫)
軟腐病の発生には特定の環境条件が大きく影響します。
高温多湿
高温多湿な環境は、軟腐病菌が増殖するのに適した環境です。特に夏場の気温が高い時期や、長雨、排水の悪い圃場では注意が必要です。
土壌
排水不良な粘土質の土壌や、有機物が十分に分解されていない土壌は軟腐病の温床になりがちです。
害虫
キスジミノハムシ、ヨトウムシ、コオロギ、アオムシなどの食害痕が、軟腐病菌の侵入経路となります。
軟腐病を未然に防ぐための予防策
土壌環境の改善と適切な水管理
軟腐病の予防は、健全な土壌づくりから始まります。堆肥の施用や深耕によって土壌の排水性・通気性を高めることは、軟腐病の発生を抑える上で非常に重要です。また、畝を高くする、水はけをよくするための排水溝を設けるなどの工夫も有効です。同時に、過度な密植を避けて風通しをよくすることも大切です。水やりは、土壌の表面が乾いたタイミングを見計らって行い、過湿状態を避けるよう心掛けましょう。
耐病性品種の選定と連作の回避
軟腐病に耐病性のある品種を選ぶことも、有効な予防策です。品種を選ぶ際には、地域の気候や栽培時期に合ったものを選定しましょう。また、軟腐病菌は土壌中に長期間生存するため、同じ圃場で連続してアブラナ科の作物を栽培すると、発症リスクが高まります。軟腐病の発生歴がある圃場では、数年間はアブラナ科以外の作物を栽培して連作を避けるほうが無難です。
物理的・化学的防除による対策
軟腐病の防除には、侵入経路となる害虫を防除するとともに、予防的な農薬の使用による対策が重要です。
侵入経路(害虫による食害)を防ぐ物理的防除
定植後に防虫ネットを張ることで、白菜への害虫の侵入を物理的に防ぎます。また、定期的に見回りを行い、卵塊や幼虫を見つけ次第捕殺することで、ヨトウムシ等による食害を防ぐことも大切です。
侵入経路(害虫による食害)を防ぐ化学的防除
害虫の食害から白菜を守るには、殺虫剤の使用も効果的です。
予防のための薬剤散布のポイント
軟腐病の予防には、発病前の予防薬剤の散布も重要です。予防薬剤は、軟腐病の発生が予想される時期(高温多湿の時期や収穫期前など)に合わせて、計画的に散布することがポイントです。また、播種時、定植時の土壌混和剤などを使用して、白菜の病気に対する抵抗性を高める方法も効果的です。
その他の予防策:除草
軟腐病菌は、つゆ草、スベリヒユ、アカザ、ノゲシなどの雑草の根でも増殖するため、それらの雑草が感染源になる恐れがあります。そのため、雑草の除去も重要な対策となります。
軟腐病が発生してしまった場合の対処法
被害株の早期発見と拡大防止
軟腐病が発生した場合、最も重要なのは被害の拡大を食い止めることです。まず、感染が疑われる株を早期に発見し、速やかに圃場から隔離します。腐敗が進んだ株は、病原菌が広がる原因となるため、直ちに処分しなければなりません。
罹病株の適切な処理方法
罹病株は、圃場内に放置せず、速やかに焼却処分または土中深く埋めるなどの方法で適切に処理します。処分した後は、その周辺の土壌も消毒することが推奨されます。
軟腐病に効果のある治療薬剤
軟腐病の発生初期であれば、一部の薬剤が治療効果を発揮する可能性があります。ただし、治療効果と言っても、病原細菌の増殖を抑制したり、感染後の進展を止めたりする程度であり、病斑や枯死が治る訳ではないため、基本的には感染前の予防に重点をおくべきと言えます。
まとめ
白菜軟の腐病は、農業経営にとって決して無視できない大きなリスクとなる病害です。ご紹介したように、軟腐病の発生には特定の環境条件や害虫が深く関わっており、予防と早期対処が何よりも重要です。対策をしっかり行い、健全な白菜の栽培を実現しましょう。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。