トマトの疫病とは?疫病の症状と防除・予防策

トマトの疫病とは?疫病の症状と防除・予防策

トマト栽培において、疫病は収量や品質に大きな影響を及ぼす深刻な問題です。茎や果実に大きな被害をもたらすため、適切な対処を怠ると圃場全体に広がる危険性があります。

疫病の発生原因や防除方法を理解して正しく対応することが収穫の良しあしを左右する重要なポイントとなります。

本記事では、トマトの疫病について、症状や発生条件、防除・予防策を詳しく解説します。

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トマトの疫病とは?基礎知識を知ろう

トマトの疫病は、フィトフソラ属に分類される数種類のカビが原因で引き起こされる病気です。この病気は特に茎や葉、果実に症状を起こして進行が早いため、早期発見と対処が重要です。発生すると圃場全体に広がり、最悪の場合は収穫が全く得られない状況に陥ることもあります。そのため、疫病の特徴や発生条件を正しく理解し、日頃から対策を講じることが欠かせません。

トマトの疫病の特徴

トマトの疫病は、高温多湿な環境や土壌水分の高い環境で発生しやすいことが大きな特徴です。

発生時期

トマトの疫病は、梅雨から夏にかけての時期に多発します。この時期は気温が20~30℃に達し、雨が続くことで土壌が湿った状態が長引き、フィトフソラ属の菌類が繁殖しやすい環境が整います。特に排水不良の圃場では菌が増殖しやすく、夏の高温期の湿気は菌の活動をさらに活発にし、感染リスクが高まります。

原因・条件

トマトの疫病が発生する背景には、主に以下の3つの要因が影響しています。それぞれの条件を適切に理解し、栽培環境を整えることで発生リスクを抑えることが可能です。

過剰な湿気

雨や灌水(過剰な水やり)によって湿度が高くなる環境は、フィトフソラ属の菌類にとって理想的な繁殖条件です。特に葉や茎が常にぬれた状態にあると、簡単に感染するため注意が必要です。

土壌の排水不良

水はけの悪い土壌では、土中に水分が滞留し、菌が繁殖しやすくなります。これにより、菌が土壌中で活発化し、泥はねや水はねによって葉などから侵入し感染します。

密集した栽培

トマトを密集して植えると、風通しが悪くなり、湿気がこもりやすい状態が生まれます。この環境ではフィトフソラ属の菌類が簡単に広がり、隣接する株への感染リスクが高まります。

トマトの疫病を見分けるポイント

以下に、疫病の代表的な症状について詳しく解説します。

葉や茎・果実に黒い斑点が発生する

葉には、円形灰緑色の病斑をつくって、後に大型で暗褐色の病斑となります。湿度の高いときには病斑の表面に白色のカビが見える一方、乾燥すると乾いて茶褐色となり、組織の薄い葉ではもろく破れやすくなります。一方、茎や葉柄部分では、黒や茶色の小さな斑点が現れて徐々に拡大し、周囲の組織が腐敗して行きます。特に、斑点が湿ったように見える、触ると柔らかいといった場合には注意が必要です。これらの斑点は、疫病の病原が茎や果実に感染したことを示しており、早急な対応が求められます。

果実の一部が腐り、柔らかくなる

果実の場合では、表面に黒ずんだ部分が現れ、その部分が腐り始めることがあります。腐敗した部分は柔らかくなり、悪臭を伴う場合もあります。この症状は、果実に付着した病原菌に感染することで発生します。特に、果実が土壌や水と接触していると感染リスクが高まるため、果実が地面に触れないようにすることも予防の一環となります。

茎の一部が黒ずみ、水を吸い上げられなくなることで全体がしおれる

茎が黒ずんで変色すると、水分や養分の吸い上げが阻害され、株全体がしおれてしまうことがあります。この状態を放置すると、病気が他の株に広がる可能性が高まるため、早急な対処が必要です。

こうした症状が一つでも確認された場合には、感染の拡大を防ぐため、できるだけ早く対策を講じることが重要です。特に、雨が続いた後や高湿度の環境が続いたときは、葉や茎、果実の状態を入念に観察しましょう。

トマトの疫病が発生してしまったときの対処法

トマトの疫病は、発生後の迅速な対応が被害拡大を防ぐカギとなります。以下に初期対応策を詳しく解説します。

感染した茎や果実を取り除く

疫病の感染が確認された茎や果実は、できるだけ早く、その該当部を切除する必要があります。感染源を取り除くことで、菌が周囲の株や土壌に広がるのを防ぐことができます。切除した茎や果実は放置せず、必ず圃場の外で適切に処分してください。また、作業後にはハサミや手袋をアルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、別の株への二次感染を防ぎましょう。エタノールなどをスプレーしてハサミなどを消毒する場合には、植物にかからないように注意が必要です。

薬剤の使用

感染初期には、疫病に有効な殺菌剤を使用することが効果的です。薬剤を選ぶ際には、必ずラベルに記載された使用方法や濃度を守って散布してください。特に、雨が降って土壌水分が高い状態が続くと疫病菌の繁殖条件が整い、泥はね等によって感染します。薬剤散布は予防的に使用する他、雨後の感染拡大を防ぐ目的にも有効です。また、同じ圃場で繰り返しトマト栽培をする場合には、次の作付の栽培前に土壌消毒することも大切です。土壌消毒によって、病原となるフィトフソラ属の菌類の密度を低くして、感染の危険性を低減できます。

湿気を抑える環境を整える

湿気の多い環境はフィトフソラ属の菌類の繁殖を助長します。そのため、圃場の湿度を抑える工夫が感染拡大の防止に効果的です。密集した枝葉を剪定して風通しを改善し、空気が循環しやすい環境を作り、湿度を抑えることで、感染拡大のリスクを軽減できます。

トマトの疫病を防ぐための予防策

土壌管理と適切な水管理

土壌管理は、トマトの疫病を防ぐ上で欠かせないポイントです。排水性の良い土壌を作るために、畝を高くし、過剰な湿気が滞らないようにしましょう。また、雨後、増殖した疫病菌が泥はねを通して感染するのを回避するにはマルチによる土壌被覆も効果的です。水やりは朝の早い時間帯に行い、葉や果実が乾燥する時間を確保することが重要です。必要以上の水やりは土壌の湿度を上げ、病原菌が繁殖するリスクを高めるため注意が必要です。

衛生的な栽培環境の維持

トマトの疫病予防において、衛生的な栽培環境を維持することは非常に重要です。感染部位を切除した際、使用したハサミや手袋などの農具を作業後に消毒したり、作物残渣(栽培後に残る茎葉など)を撤去したりすることが効果的です。また、作業用の靴や手袋を複数用意し、圃場ごとに分けて使用することで、菌の持ち込みを防ぐことができます。

まとめ

トマトの疫病を防ぐには、日常的な観察と適切な環境管理が欠かせません。栽培環境のモニタリング装置などを駆使して、日々変わる温湿度環境、土壌環境をチェックできれば、疫病発生のタイミングを予見できるかもしれません。早期に症状を発見し、迅速に対応することで被害を最小限に抑えることが可能です。ある研究では、気温20度以上、葉面が6時間以上連続してぬれていると疫病が発生しやすくなるという報告もあります。土壌管理や衛生管理といった予防策も組み合わせて、疫病の発生リスクを低減させ、大切なトマトを健康に育てましょう。

執筆者情報

株式会社ユニリタ アグリビジネスチーム

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム

ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。

日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。

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