
トマトが腐る?軟腐病の症状と効果的な防除法
トマト栽培において、新規就農者や若手農家が特に注意すべき病害の一つが「軟腐病(なんぷびょう)」です。
本記事では、軟腐病の症状や発生原因を詳しく解説し、実践しやすい予防策や効果的な防除方法をご紹介します。栽培経験の浅い若手生産者の方でもすぐに取り組める方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
トマトの軟腐病とは?基本知識と症状
軟腐病の定義と特徴
軟腐病とは、細菌によって引き起こされる植物の病害です。特に高温多湿の環境下で発生しやすく、トマトをはじめ非常に多くの野菜に被害を与えます。感染した部位は軟化し、最終的には悪臭を伴う腐敗が進行します。
トマトに発生する軟腐病の主な症状
軟腐病に感染すると、茎や果実が水浸状に変色し、腐敗が進むにつれて悪臭が発生します。トマト株では、主に潅水や降雨による土壌のはね上がりが原因で、トマトの株に移って繁殖し、摘葉・摘芽などの傷口である葉柄の基部から感染することが多いです。その場合、葉にはあまり異常が見られないため、初期段階での発見が難しい病害の一つです。 また、茎にできた黒変部は、やがて茎内部に侵入して、髄部を腐敗させて空洞化し、葉が黄化(後に黒変)して、株全体がしおれ、枯死します。
トマトの軟腐病の発生原因とリスク要因
発生しやすい環境条件(気温・湿度・土壌状態)
諸説ありますが、軟腐病は気温25~30℃で、湿度の高い環境で発生しやすい傾向があります。過剰な灌水や、通気性の悪い土壌は感染を助長する要因となります。
トマト栽培で特に注意すべきリスク要因
管理作業でできた傷口や害虫による食害痕、収穫時のダメージが感染経路となります。特に、軟腐病は湿潤な傷口から感染するため、摘葉などの管理作業は晴天時に実施するのが好ましいです。
トマトの軟腐病を防ぐための予防対策
連作を避けることで土壌感染リスクを低減
同じナス科作物を栽培するなどの連作は土壌中の病原菌を増殖させて、病害発症の確率を高めます。輪作を取り入れることで、発症リスクを低減させることが大切です。
水はけの良い環境づくりと適切な湿度管理
湿度が高い環境では病原菌の繁殖を促進します。高畝にして排水対策を行ったり、換気を適切に行ったりして湿度管理を徹底することが重要です。
発病株の早期除去と正しい処分方法
発病した株を放置していると、管理作業などを通して周囲の株へ二次伝染するばかりでなく、増えた病原菌が土壌に戻って、土壌内の菌密度が高くなってしまうことも懸念です。感染株を見つけたら、早期に株の周囲ごと抜き取って圃場外で処分(焼却処分)することで感染拡大を防ぐことが可能です。
道具の消毒と衛生管理の徹底
ハサミや作業用手袋など、道具の消毒を徹底することで病原菌の拡散を防げます。作業ごとに消毒用アルコールや次亜塩素酸カルシウム溶液等を使用するのが有効です。
農薬による防除
軟腐病は気温と湿度が高まる春先から夏にかけて発生しやすくなる病気です。トマトの株に付着した病原菌の増殖を抑えるため、殺菌剤を定期的に散布して防除に努めましょう。また、農薬の一種である微生物防除資材の利用は、軟腐病に拮抗作用のある微生物を増殖させることが可能です。すると、軟腐病の菌密度を低減させることができるため、発症を抑制するのに有効です。
トマトに軟腐病が発生した場合の対処法
初期段階での農薬散布が有効
軟腐病を治療する農薬はありません。ただし、発生を確認したら、その初期に適切な農薬を散布することで、被害を最小限に抑えることは可能です。一方で、軟腐病が広がってしまうと、農薬散布をしても抑えるのは難しくなります。
感染株の適切な除去と処分方法
土壌中の病原菌密度を高めないよう発病株は取り除き、圃場内に残さないようにすることが重要です。圃場内で処分したり、発病株を放置したりしておくと、管理作業や資材を通して隣接株に広がる危険性があります。
土壌消毒と土壌改良による再発防止
感染が確認された圃場は、太陽熱消毒や土壌改良を行い、病原菌を減少させることが重要です。
まとめ
軟腐病は高温多湿の環境で発生しやすく、一度発生すると急速に拡大します。適切な予防策を実践することで、被害を最小限に抑えることが可能です。
対策をしっかり行い、健全なトマト栽培を実現しましょう。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。