
トマトのコナジラミ対策!効果的な方法とは?
トマト栽培において「コナジラミ」は生産者を苦しめる厄介な害虫の一つです。この記事では、トマト栽培における「コナジラミ」の特徴や被害内容を解説し、実践的で効果的な対策方法をわかりやすく紹介します。
コナジラミとは?その生態と種類
コナジラミは、農作物栽培において注意が必要な害虫の一つです。これらの小さな虫は見過ごされやすいものの、甚大な被害をもたらす可能性があります。
コナジラミの基本情報
コナジラミ(学名:Aleyrodidae)は、体長1〜2mm程度、はねは白く細長く、頭から胴体は黄白色や淡黄色をした小型の昆虫です。非常に小さいため、一見すると虫とは分からず、トマトの葉や茎に付着した白い点のように見えます。葉裏に産卵し、幼虫から成虫になるまで植物の汁液を吸いながら成長します。この吸汁行為が植物に大きなストレスを与え、収穫量や品質の低下につながります。
トマト生産者が注意すべき害虫「コナジラミ」
トマト生産者にとって、問題となるコナジラミは以下の2種類です。微細な違いはありますが、外観も非常に似ています。また、コナジラミには同じ種類の中にバイオタイプと呼ばれる異なる特徴を示すものもいますが、他の害虫と比べると総じて次のようなことが言え、迅速な対応が必要です。
- オンシツコナジラミ(学名:Trialeurodes vaporariorum)
- タバココナジラミ(学名:Bemisia tabaci)
高い繁殖力:種類にもよりますが、1カ月前後の寿命で1匹の雌が数十~数百個の卵を産むため、短期間で大量発生するリスクがあります。
植物病害の媒介:コナジラミは「黄化葉巻病」などのウイルス病を媒介して、トマトの葉や果実に直接的な被害を与えます。
農薬への耐性化:農薬を長期間使用し続けると耐性がつきやすい害虫です。作用機構の異なる農薬をローテーション散布する多角的な防除が必要です。
コナジラミによるトマトへの被害
コナジラミの被害は、直接的な吸汁行動にとどまらず、間接的な病害の媒介にも及びます。
被害の特徴と症状
コナジラミによる被害は、以下の3つに大別されます。
すす病の発生
コナジラミがトマトに与える代表的な被害の一つが「すす病」の発生です。コナジラミは吸汁行動の過程で「甘露」と呼ばれる排せつ物をトマトの葉や果実の表面に残します。この甘露は、すす病の原因となるカビの栄養分となり、黒いすすのような斑点が広がります。
すす病が発生すると、光合成が妨げられ、トマトの成長が停滞し、最終的には品質や収穫量の低下につながります。果実に付着したすすは、通常、果布で拭き取ったり水洗いしたりするときれいになりますが、果皮が侵されている場合もあります。すすで汚れた果実は調製出荷作業に大変な労力を要します。
植物体の吸汁被害
コナジラミはトマトの葉や茎から汁液を吸い取ることで、株全体に大きなダメージを与えます。コナジラミの幼虫ははねが無く、最初の脱皮までは脚があって移動するものの、その後、成虫になって飛翔するまでは脚が無くなって、葉裏に固着して吸汁し続けます。この吸汁行動により、葉の葉緑素が抜けてカスリ状になったり、黄化して成長が阻害されたりと、果実の発育も不十分となります。また、枯死することで、収穫できる果実の量が減少します。
黄化葉巻病の拡大
コナジラミは、ウイルス病の媒介者としても知られており、「黄化葉巻病を引き起こす要因となります。この病害はトマトの葉が黄変し、巻き上がるように縮れる症状が特徴です。黄化葉巻病に感染したトマトは成長が大きく妨げられ、果実の形成不良や収穫量の著しい減少を招きます。
特にタバココナジラミが媒介するこの病害は、一度発症すると治癒することは無く、発症株を吸汁したコナジラミが媒介して健全な株に被害を広げる、防除の難しい病気です。日本国内でも増加傾向にあり、生産者にとって防除対策が喫緊の課題となっています。
トマトのコナジラミ対策方法
コナジラミの被害は、適切な対策を採ることで最小限に抑えることができます。ここでは、効果的なコナジラミ対策について解説します。
予防策
コナジラミ対策の基本は、「発生させない環境づくり」です。
圃場周辺の雑草除去
コナジラミは雑草にも寄生するため、圃場周辺の雑草を定期的に除去することが重要です。雑草除去は、植え付け前や栽培期間中にも継続的に行いましょう。
防虫ネットの活用
防虫ネットは、物理的にコナジラミの侵入を防ぐ最も効果的な方法の一つです。目の細かいネット(0.4mm以下の目合い)を使用することで、コナジラミの圃場への侵入を防ぎます。ただし、0.4mm以下の目合いの防虫ネットでは、通気性が悪くなり、ビニールハウス内の熱がこもって温度が高くなるため注意が必要です。また、ネットの設置時には、隙間がないよう注意してください。
近紫外線カットフィルムの使用
施設栽培の場合では、近紫外線カットフィルムを使用することで、コナジラミの圃場への侵入を抑制することができます。防虫ネットなどの物理的な対策と併用することで高い予防効果が期待できます。ただし、近紫外線カットフィルムの被覆をした場合、トマトの生育がやや徒長ぎみになるため、かん水管理に細心の注意が必要になるばかりか、受粉に用いるセイヨウマルハナバチが(カットする紫外線の波長域によっては)冬季の日照不足の環境下において飛翔活動の低下があるとする研究結果もあります。
モニタリング方法
コナジラミの発生状況を把握するためのモニタリングは、早期発見に欠かせません。
黄色い粘着シートの使用
黄色の粘着シートは、コナジラミが好む黄色を利用して捕獲するツールです。このシートを圃場内に設置することで、コナジラミの発生状況を目視で確認できます。特に、発生が予想される初期段階から設置して定期的に取り換えることで、経時的なコナジラミの発生数をモニタリングすることが可能です。
駆除策
予防やモニタリングによってコナジラミが発見された場合は、速やかに駆除策を実施することが必要です。ここでは、具体的な駆除方法を紹介します。
薬剤散布の適切な実施
農薬を使用した駆除は、コナジラミ対策として広く行われています。しかし、農薬への耐性化が進むリスクがあるため、作用機構の異なる農薬をローテーションで使用することが推奨されます。
捕食性天敵の利用
環境負荷を減らしつつ効果的な駆除を目指す場合、捕食性天敵を利用する方法が有効です。タバコカスミカメやオンシツツヤコバチは、コナジラミを捕食し、その繁殖を抑えることができます。特に、ハウス栽培において導入しやすい方法です。ただし、上述の薬剤散布にあたっては、これらの天敵に影響の少ない農薬を選定することが必要です。
LED捕虫器や蒸し込み処理
LED捕虫器は、コナジラミを光で誘引して捕獲する新しい防除方法です。この技術は、農薬に頼らない環境に優しい選択肢として注目されています。また、蒸し込み処理(高温処理)は、圃場全体を一時的に高温環境にすることで害虫を駆除する手法であり、施設栽培の栽培終了後にハウス外にコナジラミを出さずに死滅する方法として効果的です。栽培終了後の蒸し込み処理は、トマトの株元を切断する、もしくは株を抜き取った後にハウスを密閉し、ハウス内温度が40℃を超える日が10日以上持続するように管理することが目安です。
まとめ
コナジラミはトマト栽培において、品質や収穫量に深刻な影響を与える害虫です。しかし、適切な対策を講じることで、その被害を最小限に抑えることが可能です。
トマト栽培は、多くの課題を抱える作物でもあります。ぜひ本記事の内容を参考に、コナジラミ対策を取り入れながら、高品質なトマト栽培を目指してください。
執筆者情報

株式会社ユニリタ
アグリビジネスチーム
ユニリタのアグリビジネスチームのメンバーが執筆しています。
日々、さまざまな農家さまにお会いしてお聞きするお悩みを解決するべく、農業におけるデータ活用のノウハウや「ベジパレット」の活用法、千葉県に保有している「UNIRITAみらいファーム」での農作業の様子をお伝えしていきます。